よく「現場の声に耳を傾けよう」というようなことが言われる。わが社においても例外ではなく、やれ「現場で対応する人間の意見を尊重しよう」だの「トップはもっと現場のことを考えて」だのいう主張が幅を利かせており、まるで「現場」だけが大事な仕事をしているとでも言わんばかりである。

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 もちろんこんなのは建前だけで、内心は(少なくとも課長級程度以上の役職者なら)仕事は決して現場だけで回るものではなく、むしろ管理職級以上の上層部が見えないところで大事な決定を行って支持を出しているからこそ、末端は「現場、現場」などと言ってもいられるのである。

 恐ろしいのはこういう意見を口にするだけでまるでA級戦犯のように問答無用で叩かれる風潮があることだ。そこにあるのは何人たりとも「現場」の人間を尊重せねばならぬという「現場原理主義」のような固定観念である。

 こういう「理念」は大事だが、時として有害でもある。私の立ち位置では心ならずも「現場」で働くみなさんにも無理を言わねばならないことが少なからずあるのだが、その時あまり「現場」の事情ばかりを優先するわけにはいかないことが少なくない。

 そんな時私の立場を理解してくれる部下ばかりであればいいが、そうは問屋が卸さない。「現場」の事情を盾に私の見解を否定してくるような者もいるのだ。役職者と言っても係長や課長代理程度のレベルだとまだまだ「現場」との距離の方が近い上に、なまじ肩書きがついた分、部下もいる手前、「上にもモノが言える上司」を演じたがるような手合いもいるから質が悪かったりする。

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 特に最近では共働きで管理職までは上がるつもりもないような職員も増えているが、こういう中途半端な連中ほど変に「現場意識」の強い職員が多い気がする。だが私は敢えて言いたい。事件が起きるのは「現場」などではなく、「会議室」の方なのだと。

青島君、君には室井さんの苦悩は理解できないだろう。


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